エネルギーミックスの議論:各国の多様度尺度の推移2017年08月17日 15:17

このブログでは、2015年にエネルギーミックスの議論をする上で、持続可能性のために多様度評価をするべきであり、そのための指標として重み付き多様度指数を提案して各国の状況を示した。

 

各国の状況については、その時は2013年までのデータをIEAのデータをもとに示したが、2014年のデータも現在は示されているので、各国のその後の推移状況をまとめてみた。

以下の表が2014年のデータを含めた推移状況である。

 

日本

ドイツ

デンマーク

イタリア

電源割合(年)

2010

2012

2013

2014

2010

2012

2013

2014

2010

2012

2013

2014

2010

2012

2013

2014

石炭

0.267

0.293

0.322

0.335

0.446

0.471

0.488

0.480

0.451

0.294

0.399

0.316

0.128

0.158

0.146

0.144

石油

0.084

0.175

0.143

0.112

0.013

0.013

0.012

0.010

0.020

0.011

0.010

0.009

0.063

0.055

0.047

0.044

天然ガス

0.269

0.384

0.384

0.404

0.141

0.127

0.114

0.105

0.203

0.117

0.095

0.060

0.441

0.377

0.328

0.289

バイオ燃料

0.026

0.029

0.031

0.028

0.047

0.065

0.068

0.073

0.095

0.099

0.097

0.097

0.021

0.030

0.045

0.051

廃棄物発電

0.006

0.008

0.008

0.006

0.018

0.019

0.020

0.023

0.043

0.045

0.044

0.046

0.012

0.013

0.014

0.015

原子力

0.258

0.015

0.009

0.000

0.229

0.163

0.162

0.164

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

水力

0.081

0.081

0.081

0.084

0.045

0.046

0.048

0.043

0.001

0.000

0.000

0.000

0.157

0.128

0.165

0.186

地熱

0.002

0.003

0.002

0.002

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

0.016

0.016

0.017

0.018

太陽光

0.003

0.007

0.014

0.024

0.019

0.043

0.052

0.061

0.000

0.003

0.014

0.017

0.006

0.055

0.065

0.069

太陽熱

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

風力

0.004

0.005

0.005

0.005

0.062

0.083

0.086

0.097

0.201

0.286

0.310

0.373

0.026

0.039

0.045

0.047

潮力

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

その他

0.000

0.000

0.000

0.000

0.005

0.003

0.003

0.003

0.000

0.000

0.000

0.000

0.002

0.002

0.002

0.002

輸出入

0.000

0.000

0.000

0.000

-0.024

-0.034

-0.054

-0.057

-0.029

0.145

0.030

0.082

0.128

0.126

0.127

0.135

単純指数

0.776

0.728

0.720

0.703

0.733

0.737

0.731

0.739

0.715

0.706

0.705

0.690

0.662

0.727

0.760

0.774

重み付け指数

0.900

0.862

0.858

0.850

0.860

0.854

0.845

0.849

0.847

0.907

0.871

0.890

0.887

0.907

0.924

0.934

 

米国

中国

フランス

イギリス

電源割合(年)

2010

2012

2013

2014

2010

2012

2013

2014

2010

2012

2013

2014

2010

2012

2013

2014

石炭

0.453

0.379

0.392

0.390

0.775

0.760

0.756

0.726

0.049

0.042

0.047

0.024

0.283

0.384

0.353

0.284

石油

0.011

0.008

0.008

0.009

0.003

0.001

0.001

0.002

0.010

0.008

0.005

0.004

0.012

0.008

0.006

0.005

天然ガス

0.231

0.292

0.265

0.264

0.016

0.017

0.017

0.020

0.044

0.042

0.033

0.026

0.457

0.266

0.256

0.280

バイオ燃料

0.012

0.013

0.013

0.014

0.006

0.007

0.007

0.008

0.005

0.006

0.006

0.006

0.027

0.034

0.044

0.061

廃棄物発電

0.005

0.005

0.005

0.004

0.002

0.002

0.002

0.002

0.008

0.009

0.007

0.008

0.008

0.011

0.011

0.011

原子力

0.190

0.185

0.188

0.189

0.018

0.020

0.021

0.023

0.796

0.818

0.808

0.881

0.162

0.187

0.189

0.177

水力

0.065

0.069

0.066

0.064

0.172

0.175

0.169

0.188

0.125

0.122

0.144

0.138

0.018

0.022

0.020

0.024

地熱

0.004

0.004

0.004

0.004

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

太陽光

0.001

0.002

0.003

0.005

0.000

0.001

0.003

0.005

0.001

0.008

0.009

0.012

0.000

0.003

0.005

0.011

太陽熱

0.000

0.000

0.000

0.001

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

風力

0.022

0.033

0.039

0.042

0.011

0.019

0.026

0.028

0.018

0.029

0.031

0.035

0.026

0.052

0.076

0.089

潮力

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

0.001

0.001

0.001

0.001

0.000

0.000

0.000

0.000

その他

0.000

0.000

0.001

0.001

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

0.001

0.001

0.001

0.000

0.000

0.000

0.000

輸出入

0.006

0.011

0.014

0.012

-0.003

-0.002

-0.002

-0.002

-0.057

-0.086

-0.092

-0.136

0.007

0.032

0.039

0.057

単純指数

0.697

0.725

0.726

0.729

0.373

0.394

0.401

0.438

0.412

0.409

0.424

0.367

0.679

0.724

0.745

0.768

重み付け指数

0.847

0.867

0.868

0.869

0.660

0.673

0.676

0.700

0.799

0.787

0.791

0.751

0.846

0.871

0.884

0.903

 

 

 この表からわかるように、2014年は再生可能エネルギーの割合が、各国で増えてきており、わが国とフランスを除いて、概ね重み付き多様度指数が改善してきているのはよいことである。わが国では原子力発電の割合がゼロになり、その分、天然ガス、石炭依存が増えてきているため、2012年以降毎年悪化してきていることが目立っており、残念なことである。




エネルギーミックスの議論:多様度評価から見た各国比較とわが国の2030年見通し2015年11月30日 14:11

エネルギー問題については、前回(4月)に社会の持続可能性を担保するために、エネルギーミックスの議論をするのであれば、多様性評価の尺度を入れるべきであり、そのための重み付き多様度指数について提案した。

そして、IEAデータに基づき、3.11大震災前の2010年と大震災後の2012年について、主要な国の指数について比較し、わが国は残念ながら大震災前の世界第一位の多様性から低下していることを示し、各国は概ね改善していることを示した。

 

IEAのデータで、2013年分が公開され、さらに今年の7月にわが国の2030年の見通し(私自身はこのような長期見通しを立てることに賛成しないが、政府の目指しているところを多様性の観点から見ることにした)がエネルギー基本計画に基づいて発表されたので、それについても評価し、あらためて各国の状況を比較してみた。

 

以下の表が、各国の2010年、2012年、2013年の供給電源種別割合と多様性評価指標である。


   国      日本     ドイツ    デンマーク    イタリア
 電源割合(年) 2010 2012 2013   2010 2012 2013 2010 2012  2013 2010 2012 2013
   石炭0.267 0.293 0.322 0.446 0.471 0.488 0.451 0.294 0.399 0.128 0.158 0.146
   石油0.084 0.175 0.143 0.013 0.013 0.012 0.020 0.011 0.010 0.063 0.055 0.047
  天然ガス0.269 0.384 0.384 0.141 0.127 0.114 0.203 0.117 0.095 0.441 0.377 0.328
  バイオ燃料0.026 0.029 0.031 0.047 0.065 0.068 0.095 0.099 0.097 0.021 0.030 0.045
  廃棄物発電0.006 0.008 0.008 0.018 0.019 0.020 0.043 0.045 0.044 0.012 0.013 0.014
   原子力0.258 0.015 0.009 0.229 0.163 0.162 0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 0.000
   水力0.081 0.081 0.081 0.045 0.046 0.048 0.001 0.000 0.000 0.157 0.128 0.165
   地熱0.002 0.003 0.002 0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 0.016 0.016 0.017
   太陽光0.003 0.007 0.014 0.019 0.043 0.052 0.000 0.003 0.014 0.006 0.055 0.065
   太陽熱0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 0.000
   風力0.004 0.005 0.005 0.062 0.083 0.086 0.201 0.286 0.310 0.026 0.039 0.045
   潮力0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 0.000
   その他0.000 0.000 0.000 0.005 0.003 0.003 0.000 0.000 0.000 0.002 0.002 0.002
   輸出入0.000 0.000 0.000 -0.024 -0.034 -0.054 -0.029 0.145 0.030 0.128 0.126 0.127
  単純指数0.776 0.728 0.720 0.733 0.737 0.731 0.715 0.706 0.705 0.662 0.727 0.760
 重み付け指数0.900 0.862 0.858 0.860 0.854 0.845 0.847 0.907 0.871 0.887 0.907 0.924
   国      米国     中国     フランス     イギリス
 電源割合(年) 2010 2012 2013 2010 2012 2013 2010 2012 2013 2010 2012 2013
   石炭0.453 0.379 0.392 0.775 0.760 0.756 0.049 0.042 0.047 0.283 0.384 0.353
   石油0.011 0.008 0.008 0.003 0.001 0.001 0.010 0.008 0.005 0.012 0.008 0.006
  天然ガス0.231 0.292 0.265 0.016 0.017 0.017 0.044 0.042 0.033 0.457 0.266 0.256
  バイオ燃料0.012 0.013 0.013 0.006 0.007 0.007 0.005 0.006 0.006 0.027 0.034 0.044
  廃棄物発電0.005 0.005 0.005 0.002 0.002 0.002 0.008 0.009 0.007 0.008 0.011 0.011
   原子力0.190 0.185 0.188 0.018 0.020 0.021 0.796 0.818 0.808 0.162 0.187 0.189
   水力0.065 0.069 0.066 0.172 0.175 0.169 0.125 0.122 0.144 0.018 0.022 0.020
   地熱0.004 0.004 0.004 0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 0.000
   太陽光0.001 0.002 0.003 0.000 0.001 0.003 0.001 0.008 0.009 0.000 0.003 0.005
   太陽熱0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 0.000
   風力0.022 0.033 0.039 0.011 0.019 0.026 0.018 0.029 0.031 0.026 0.052 0.076
   潮力0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 0.001 0.001 0.001 0.000 0.000 0.000
   その他0.000 0.000 0.001 0.000 0.000 0.000 0.000 0.001 0.001 0.000 0.000 0.000
   輸出入0.006 0.011 0.014 -0.003 -0.002 -0.002 -0.057 -0.086 -0.092 0.007 0.032 0.039
  単純指数0.697 0.725 0.726 0.373 0.394 0.401 0.412 0.409 0.424 0.679 0.724 0.745
 重み付け指数0.847 0.867 0.868 0.660 0.673 0.676 0.799 0.787 0.791 0.846 0.871 0.884

これを見てわかるのは、わが国のエネルギーミックスは他国に比して大震災前はもっとも多様性に富んだものであったが、大震災後も低下したとはいえ、決して遜色のないものではないということである。これは、もともと資源のない島国として、多様性の観点から努力してきていることを示しているもので、自信をもってよいと思う。75%以上を石炭に頼る中国や原子力に頼るフランスは、やはり多様性の観点からの持続可能性を考えれば、脆弱な国であると言えよう。

 

重み付け多様度指数は、大震災前の日本のように0.9台が望ましいと前回述べたが、2013年にこれに該当するのはイタリアだけである。ただし、イタリアの場合は、毎年に12%以上をフランス等からの輸入に頼っていることを考えれば、決してエネルギー安全保障の観点から優秀とは言えない。

尚、7月に発表された政府の長期エネルギー見通しにおける2030年の電源割合は、石炭0.26、石油0.03、天然ガス0.27、バイオ燃料0.037~0.046、原子力0.2~0.22、水力0.088~0.092、地熱0.01~0.011、太陽光0.07、風力0.017であるので、これを使って重み付き多様度指数を計算すると0.909になり、目指すべき0.9台に到達し、多様性の観点からの望ましいエネルギーミックスの形になっていると言えよう。

各国の状況含めて、重み付き指数の状況を以下のグラフに示したので参照して欲しい。

 

各国の電源多様度重み付け指数


エネルギーミックスの議論:持続可能性には多様性の視点が不可欠、多様性の評価指標について(2)2015年04月08日 14:42

前回示した多様性の評価指標の考えを具体的に各国の状況に当てはめてみた場合、どのように評価されるのかを見てみることにする。もちろん、国によって重み指数を考える項目の一つであるコストについては、事情が異なるのは承知しているが、ここでは、前回示したわが国での評価をそのまま当てはめることとした。

各電源種別における重み指数をωiとすると、以下でエネルギーミックスの多様度指数を定義する。

 

エネルギーミックス多様度指数=1-λ=1-ΣωixPi

          Pi:当該電源種別の電力供給割合

 

<各国のエネルギーミックス多様度指数>

我が国や他の各国のエネルギーミックスが実際どうなっているのかは、IEA(国際エネルギー機関)(http://www.iea.org/)が発表している各国統計から知ることができる。

このブログでも紹介してきた国含めて、日本、ドイツ、デンマーク、イタリア、米国、中国、フランス、イギリスについて東日本大震災の起こる前の2010年と、その後の2012年のエネルギーミックス状況と、その多様度指数を評価した結果は以下の通りである。ここでは、上記の重み指数を用いた指数だけでなく、Simposonの多様度指数に相当する単純指数も合わせて示した。

 

 

日本

ドイツ

デンマーク

イタリア

電源割合

2010

2012

2010

2012

2010

2012

2010

2012

石炭

0.267

0.293

0.446

0.471

0.451

0.294

0.128

0.158

石油

0.084

0.175

0.013

0.013

0.02

0.011

0.063

0.055

天然ガス

0.269

0.384

0.141

0.127

0.209

0.117

0.441

0.377

バイオ

0.026

0.029

0.047

0.065

0.097

0.099

0.021

0.03

廃棄物

0.006

0.008

0.018

0.019

0.044

0.045

0.012

0.013

原子力

0.258

0.015

0.229

0.163

0

0

0

0

水力

0.081

0.081

0.045

0.046

0.001

0

0.157

0.128

地熱

0.002

0.003

0

0

0

0

0.016

0.016

太陽光

0.003

0.007

0.019

0.043

0

0.003

0.006

0.055

太陽熱

0

0

0

0

0

0

0

0

風力

0.004

0.005

0.062

0.083

0.207

0.286

0.026

0.039

潮力

0

0

0

0

0

0

0

0

その他

0

0

0.005

0.003

0

0

0.002

0.002

輸出入

0

0

-0.024

-0.034

-0.03

0.145

0.128

0.126

単純指数

0.776

0.728

0.733

0.737

0.715

0.706

0.662

0.727

  重み付き指数

0.900

0.862

0.860

0.854

0.847

0.907

0.887

0.907

 

 

 

米国

中国

フランス

イギリス

電源割合

2010

2012

2010

2012

2010

2012

2010

2012

石炭

0.453

0.379

0.775

0.76

0.049

0.042

0.283

0.384

石油

0.011

0.008

0.003

0.001

0.01

0.008

0.012

0.008

天然ガス

0.231

0.292

0.016

0.017

0.044

0.042

0.457

0.266

バイオ

0.012

0.013

0.006

0.007

0.005

0.006

0.027

0.034

廃棄物

0.005

0.005

0.002

0.002

0.008

0.009

0.008

0.011

原子力

0.19

0.185

0.018

0.02

0.796

0.818

0.162

0.187

水力

0.065

0.069

0.172

0.175

0.125

0.122

0.018

0.022

地熱

0.004

0.004

0

0

0

0

0

0

太陽光

0.001

0.002

0

0.001

0.001

0.008

0

0.003

太陽熱

0

0

0

0

0

0

0

0

風力

0.022

0.0033

0.011

0.019

0.018

0.029

0.026

0.052

潮力

0

0

0

0

0.001

0.001

0

0

その他

0

0

0

0

0

0.001

0

0

輸出入

0.006

0.011

-0.003

-0.002

-0.057

-0.086

0.007

0.032

単純指数

0.697

0.725

0.373

0.394

0.412

0.409

0.679

0.724

重み付き指数

0.847

0.867

0.660

0.673

0.799

0.787

0.846

0.871

注:単純指数、重み付き指数の値に計算参照ミスがあったので修正(2015年11月26日)

これらを見てわかるのは、わが国のエネルギーミックスの多様性は他の国に比して極めて高いということである。東日本大震災の前の2010年は単純指数でも重み付け指数でも一番高く、極めて良好なものであったということである。残念ながら東日本大震災により、原子力の供給がほとんど0になったことから、多様性は悪化したが、それでも米国やイギリスとほとんど変わらず、ドイツよりも良いということは大切なことで、非資源国として化石燃料を用いた発電でも単純に安い石炭に依存しないで多様性を図って努力していることを示していると言えよう。

これらの国の中では、石炭依存が高い中国や原子力依存が高いフランスが多様性評価が低くなることがわかるし、重み付けの多様度指数0.9台でないのは問題と考えた方がよいであろう(0.9台を目指すべき)。尚、概ね2010年より2012年の方が改善しているのは良いことだと思う。

 

以上、社会の持続可能性のためエネルギーミックスを議論するのであれば、このような多様性評価の視点での検討も進めて欲しいものである。



エネルギーミックスの議論:持続可能性には多様性の視点が不可欠、多様性の評価指標について(1)2015年04月07日 18:08

温室効果ガスの排出低減目標を提示するためにも、国としてのいわゆるエネルギーミックス目標を提示することが必要との意見が相変わらず多く、経産省でも総合資源エネルギー調査会の長期エネルギー需給見通し小委員会でエネルギーミックスの議論が始まっている。 

私のこの問題に関する考えは、このブログでも何度も述べてきたが、エネルギーの安定供給確保は国民の安全な社会生活に不可欠であるから、正しい科学技術認識に基づいて冷静に議論することが必要であるし、昨年3月にも、 

「20年も先のエネルギーミックスについては、技術開発の不確定性がある以上、すぐに決める必要などなく、安定で低廉なエネルギーの供給という責任ある立場からは決める必要がないのである。したがって、原発の新設は現実には不可能であるから、「原発依存度については、省エネルギー・再生可能エネルギーの導入や火力発電所の効率化などにより、可能な限り低減させる。」という施策方針で進め、省エネルギー、再生可能エネルギーの技術開発状況を毎年レビューし、その状況からエネルギーミックスについて、責任ある判断が可能とされるまで決める必要はないのである。」 

と述べ、2030年といった誰も責任が持てない先の技術見通しからエネルギーミックス目標など立てる必要はなく、無意味であると言ってきた。今も残念ながら、技術開発の不確定性は何ら変わっておらず、この考えに変わりはない。 

一方、我々の社会の持続可能性を考えるとき、それを脅かすさまざまなリスクに対するプロアクティブな対応には多様な選択肢を用意しておくこと、つまり多様性の対応が必要であることを私は経験からも痛感してきたし、同時に、何かあれば固定観念に囚われない柔軟な対応が必須であると考えてきた。 

社会の持続可能性を担保するのに不可欠な電力供給確保についても、多様性の視点からの評価が必要であると私は考えるので、エネルギーミックスを検討するのであれば、多様性の評価指標を導入して検討することも重要だと考えるが、残念ながら、これまでそのような議論はほとんど行われていないようである。 

今回は、こうしたことから、エネルギーミックスを考えるための多様性評価指標について考えてみたい。

1. 多様性の評価指標について

多様性の指標としては、よく知られているように持続可能性の観点から、生物多様性が重要とされ、その多様性を評価するために検討されてきた指標があり、確率の考えに基づいて導入された指標としてSimpsonの多様度指数がある。 

これは、ある群集において、固体種数S、全固体数Nの場合、i番目の種の個体数がniとした時、ランダムにサンプルした時に2回連続でi番目の種に当たる確率は、(ni/N)x(ni/N)であるが、これをすべての種に対して加算した

   λ=ΣPi  Pi=ni/N (Σは個体種数Sに対して)

を定義し、Simpsonの多様度指数として1-λとするもので、つまり、2回連続同一の種にあたる確率が小さいことは多様度が大きいとの評価からくるものである。 

例えば、10の個体数がすべて同一種だとλは1であるから多様度指数は0、5種類の固体種がそれぞれ2個ずついる場合は、λ=5x0.2x0.2=0.2で、多様度指数は0.8、10種類の固体種がそれぞれ1個ずついる場合は、λ=10x0.1x0.1=0.1で、多様度指数は0.9となって、多様性の大きさを表す一つの指標とされている。 

この考え方を、エネルギーミックスに検討について当てはめることも可能であり、例えば、A、B、C、D、Eという電力供給源(電源種別)の割合がそれぞれ以下の場合、 

(1)   A=0.7、B=0.15、C=0.1、D=0.03、E=0.02

(2)   A=0.3、B=0.25、C=0.2、D=0.15、E=0.1

(1)   の場合はλ=0.524で多様度指数は0.476

(2)   の場合はλ=0.225で多様度指数は0.775

 

となって、(1)に比して(2)の方が多様性の観点からは好ましいという評価ができるようになる。 

もっとも、エネルギーミックスを考える上では、電源種別ごとにそれぞれ特性があり、単純にその割合だけで、持続可能性を検討していく上での多様性評価指標とするには無理があるようである。そこで、電源種別としての特性を考える上で、私は以下の観点でのリスク性についての重みづけを考え、それを乗じた形でλを定義したらどうかと考えている。 

2.リスク性評価項目について

リスク性評価の重みづけ項目としては、将来持続性、コスト、環境性、安定供給性の4項目を私は提案したい。以下にそれぞれについて説明する。 

(1)将来持続性

これは社会の持続可能性を検討する上での多様性評価であるから、その電源種別に対する資源の供給が将来にわたって継続可能であるか否か大切であるとの観点から導入する項目である。石油や石炭あるいはウラン資源等について、それぞれ埋設資源量や可採可能年数と言った資源量評価の指標があるが、石炭にしても160年程度の可採可能年数しかない評価であり、再生可能エネルギーを除いたエネルギー資源については、将来持続性のリスクは1とするのが妥当であろう。 

(2)コスト

社会生活に不可欠な電力供給源であるから、コストは持続可能性の上でも大切な指標である。あまりに高いコストの電源は、何らかの意図的な政策がない限りどうしても淘汰されていくからである。このコストリスクをする検討する上では、正確な電源種別ごとのコスト評価が必要なわけであるが、コスト評価については、このブログでも紹介してきたように将来の評価は極めて難しく不確実なものであるが、現在の評価については、2011年の民主党政権時のコスト等検証委員会の評価があり、それを用いて評価をとりあえずは行うこととしたい。 

(3)環境性

環境性のリスクについては、地球温暖化との観点で温室効果ガスの排出リスクを評価するのが適切だと考える。この意味で、発電時のCO2排出がある化石燃料電源はリスクがあるとし、原子力、水力、再生可能エネルギーはリスクがないとするのが妥当であろう。尚、原子力については、万一チェルノブイリや福島第一のような過酷事故時には取り返しのつかない環境汚染が発生するから環境性のリスクありとすべきだとの意見があると考えるが、それは安全性リスクの問題であり、ここで供給可能として考える電源については安全性のリスクについては、許容されていることを前提とすべきである。安全性のリスクが許容されないのであれば、最初から存在しないものであり、それは多様性評価以前の問題だからである。 

(4)安定供給性

これは、その電源単独で連続的に安定供給が可能であるかどうかということで、いわゆるベースロード電源たりうるかと言うことでもある。持続可能性を考えるとき、その電源単独で連続安定供給ができず、バックアップ電源を必要とするのでは、リスクがあると考えざるを得ないからである。その意味で太陽光や風力等の不安定電源はリスクがあるとすべきである。 

(5)重みづけ指数について

上記の4つのリスク項目について、以下のように電源種別(電源種別はIEAの供給電源分類に従って、石炭、石油、天然ガス、バイオ燃料、廃棄物発電、原子力、水力、地熱、太陽光、太陽熱、風力、潮力、その他を取るが、IEAの各国の統計では、わが国には関係ないが、他国との輸出入の電力取引も含まれており、他国の評価ではこれも加える。)ごとに各項目のリスク値を決め、その平均値としてリスク重みづけ指数を評価した。 

(将来持続性リスク)

資源有限性の石炭、石油、天然ガス、原子力はリスク1とし、他は0とした。 

(コストリスク)

2011年の政府のコスト検証の2010年度値(このブログの2011年12月16日の記事参照)から、最も高い太陽光を1(変動幅の中間値37.95円/kwh)として、コスト値に比例でリスク値を割り振る。尚、太陽熱は太陽光と同じとし、潮力は実績がほとんどないがNEDOの評価他から20円/kwhとし、その他、輸出入は全体の平均値を採用した。 

(環境性リスク)

単位発電量当たりCO2排出量の最も多い石炭を1とし、石油、天然ガスはその排出量比で値を割り当て、その他はリスク0とした。 

(安定供給性リスク)

不安定電源である太陽光、太陽熱、風力、潮力は1とし、他は0、輸出入0.5とした。 

以上をまとめ、重み指数を平均値として算出したのが以下の表である。

 

リスク評価と重みづけ指数

電源種別

将来持続性

コスト

環境性

安定供給性

重み指数

石炭

1

0.253

1

0

0.563

石油

1

0.569

0.783

0

0.588

天然ガス

1

0.287

0.635

0

0.481

バイオ燃料

0

0.653

0

0

0.163

廃棄物発電

0

0.653

0

0

0.163

原子力

1

0.237

0

0

0.309

水力

0

0.260

0

0

0.065

地熱

0

0.246

0

0

0.062

太陽光

0

1

0

1

0.5

太陽熱

0

1

0

1

0.5

風力

0

0.358

0

1

0.34

潮力

0

0.527

0

1

0.382

その他

0

0.504

0

0

0.126

輸出入

0

0.504

0

0.5

0.376

 

次回は、こうした多様性の指数を実際の評価に適用してみた場合について考えてみる。

 



新エネルギー基本計画について:毎日新聞青野由利記者に反論する、中途半端な理解は誤る2014年03月07日 10:46

政府の新エネルギー基本計画案については、昨日、このブログで見解を述べたが、今日の毎日新聞を見ていると、青野由利という専門編集員が「発信箱」というコラムで「単純な「安全」」と題して見解を述べている。

 

「原発過酷事故以来、こだわっていることがある。「原発の安全性を確認する」という言葉を使わないよう心がけることだ。原発に安全はない。あるのは、危険性の大小だけ。3年前の3月11日以降、何度も恐怖を味わって思い知った。」

 

と書いて、原発の安全はない、あるのは危険性の大小だけと言い、新エネルギー基本計画案では、

 

「規制委が「基準適合」といえば「安全」なのだから、そのまま「再稼働」、という単純な理屈」

 

となっているが、それでいいのかと述べ、

 

「政府が再稼働を進めるなら、その責任をすべて規制委に押し付けるのはおかしい。なぜ事故リスクを受容することにしたのか。事故が再び起きた時に、誰がどう責任を取るのか。原発過酷事故を経てから初めての基本計画は、それ抜きには作れないはずだ。」

 

と主張している。

 

青野記者の「原発の安全はない」という言い方は極端だが、「原発は安全」という言い方、見方は、私も誤ったものだと考え、反対で、このブログで何度も指摘しているように、新規制基準に適合と評価されれば、「リスクは十分小さい(福島事故のような外部への放射性物質放出は100万炉年に一回程度)」という言い方が正しいのであり、規制委員会の新基準への適合性評価は、このリスク評価をしているのである。

 

政府案でも、

 

「原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進める。」

 

と言っているだけで、「基準適合」なら「安全」と言っているのではなく、リスクが小さいと科学技術上評価されたので、政策として再稼働すると言っているのである。したがって、再稼働の責任は政府にあるのであって、規制委員会にはないのであり、責任を規制委員会に押し付けていないことは当たり前のことであるが、青野記者はこの辺の理解が中途半端で誤っているのである。

 

リスクはが小さいと評価されたが、それでも事故時の影響が大きすぎるので再稼働すべきでないというのもひとつの政策判断で、再稼働すべきかしないかは国民の多数の意見で決めるのが民主制国家の政治政策判断だと私は思う。

ただ、その場合に、リスクについての科学技術上の評価を正しく理解する科学リテラシーが望まれるのであり、誤った理解で判断するのでは、国民も政策判断を誤るのである。

 

一般の人々に、問題を正しく理解してもらうことはマスメディアの大切な役割であろうが、そのためには、マスメディアも中途半端な理解ではなく、正しくきちんと理解する努力をしてほしいものである。