福島第一原発事故から6年:相変わらずの不安を煽る報道と客観的事実、真実の大切さ2017年03月13日 15:46

先週で3.11東日本大震災、福島第一原発事故から6年経過ということで、毎年のことでマスメディアがいろいろ特集をやっている。

このブログでは、約1年半前の2015年7月29日の記事で、福島の復旧に関する情報が増えてきて「福島第一原発事故:取り返しがつくと認識され始めているのではないか」という考えを述べた。

今年は、4月から一部を除いて帰還困難区域以外の地域での避難指示が解除され、住民の帰還が可能になるということも報道されている。

テレビでは、避難指示が解除されることになる津波に流された富岡町の駅周辺の復旧状況や、常磐線の復旧の予定等も伝え、あの有名な夜ノ森公園の桜並木の除染復旧も視野に入ってきたようで、30年以上も前、福島第二原発の1号機や3号機の建設時に、担当者として何度もかよった富岡駅周辺の復旧状況を懐かしく、またうれしい思いで見ることができた。

6年前には「取り返しが付かない」と考えた土地でも、除染により帰還が可能になるということで本当によかった考え、関係者のこれまでの努力に敬意を表したいが、それでも相変わらず、テレビ朝日の報道ステーション等の一部マスメディアでは「避難解除後も消えないホットスポット」、「避難指示解除まで1カ月、厳しい選択を迫られる住民」というような放射線に関する恐怖をことさら煽るような報道が繰り返されている。

 

一方、具体的な福島の放射線レベルは福島県(http://fukushima-radioactivity.jp/pc/)や原子力規制委員会(http://radioactivity.nsr.go.jp/ja/)のサイトなどで誰でも簡単に現在の状況や推移を知ることができ、着実に改善されてきていることは知ることができるのである。

 

こうした中で、DIAMOND onlineには、3月10日に林智裕氏の「「人殺し」と言われたことがありますか?福島とデマ、6年目の訴え」(http://diamond.jp/articles/-/120730)、3月11日に開沼博氏の「廃炉について、デマと誤報を乗り越えるための4つの論点」(http://diamond.jp/articles/-/120900?utm_source=daily&utm_medium=email&utm_campaign=doleditor)の記事が掲載され、このブログで何度も指摘してき実際の事実認識に基づかないタメにする報道や煽り、誤報を糾弾する指摘も出てきた。

 

林氏の記事では、私がこのブログの「放射線の知識」で指摘してきた放射線の危険を極端な言説で煽った人たち(放射線の知識第42回で指摘した武田邦彦氏等)の責任について言及され、福島県の甲状腺がんの状況や実際の個人被ばく線量に関する結果等の紹介から、

「新たな「神話」を創作することではなく、思い込みを排除した客観的な事実、空想ではなく現実に向き合い続けることでしょう。危険ならば危険、安全ならば安全。それは客観的な事実の積み重ねのみによって語られるべきです。」

と、私が主張してきた論点と同じことを語っておられる。

 

開沼氏は、2月に実施された福島第一2号機の内部を調査する過程で過去にない高放射線量が検出されたことの報道から、韓国の済州航空が福島へのチャータ便運航をやめたことや1Fの廃炉作業の進展に関しての報道の伝え方の問題を指摘している。この済州航空の件は開沼氏の記事で私は初めて知り、報道の仕方、マスメディアの責任というものをあらためて認識した。

私は、関係者の懸命の努力で汚染水対策には大きな前進が見られているし、残っている大きな問題はトリチウムを含んだ処理水の海洋放出問題だと考えている。取り返しのつく状態に近づけるためにも最優先課題として、政府は東電を全面的に支援し、この問題について前面にも立って、漁業関係者と話し合い、風評被害を引き起こさないよう対応すべきだと考えるが、一方、この問題の今後の報道の仕方に関しては、マスメディアの責任が極めて大きいと考えている。これからも注視していくつもりである。

 

いずれにしろ、我々は極端な言説に騙されることのないように科学的リテラシーを高める必要があるのであり、このブログでも今後も変わらずに、客観的事実に基づく正しい科学技術認識を発信していく所存である。




大阪高裁の高浜3,4号機運転差し止め仮処分決定取り消しに関して2017年03月29日 14:21

このブログでは昨年4月、川内1,2号機の運転差し止めを福岡高裁が棄却した際にも、

正しい事実認識に立った判断、決定でなければ、信頼のないものだと述べた。原発の安全性にかかわるような科学技術上の問題については、科学的、客観的に正しい認識に立った上での判断が何よりも大切なのである。

 

その意味で、予想していた通りとはいえ、昨年3月に指摘したような大津地裁の正しい事実認識に基づかない判断、決定が取り消される結果になったことは、司法の信頼にとっても良い結果になったと考えている。

 

しかしながら、一部マスメディアでは、科学的、客観的な正しい事実認識に立脚しようとせず、相変わらずゼロリスク論で感情論を先行させる論調(朝日新聞社説:あまりに甘い安全判断、毎日新聞社説:「万が一」に応えていない、東京新聞社説:あと戻りしてないか)が目立っており、残念なことである。

 

ただ、今回の再稼働反対論の新聞の中にも、今回の大阪高裁判断で、大津地裁決定での「福島第1原発事故の原因究明は建屋内の調査が進んでおらず今なお道半ばの状況で、本件の主張状況に照らせば津波を主たる原因として特定できたとしてよいのか不明」という福島の事故原因不明論が否定されたことに関しては、さすがに明確な反論ができないようで、毎日新聞が「 福島の事故で原発の安全神話は崩れ、原因究明も十分とは言えない」と述べる以外は、表立って反論していない。

実は、ほとんど報道されることはないが、先日の福島からの避難者に対する損害賠償に関して、国や東京電力の津波予見性を認めて賠償を命じた前橋地裁判決でも、明確に福島第一原発事故の直接原因は、地震でなく津波であると判断されているのである。

 

私は科学的、客観的な事実認識に立脚したうえで判断するのなら、それぞれの見識であり、多様な考えがあってもよいと考えるが、間違った事実認識に基づいて主張する、さらに悪い場合は、間違った事実認識に人を導くような主張をする人を決して信頼してはいけないのである。

 

このブログで取り上げてきた原発再稼働や放射線被ばくの問題とは違うが、最近マスメディアを賑わしている東京都の豊洲新市場の問題でも、議論している方が科学的、客観的な市場としての安全性の事実認識に立っているかどうかを見極めることが大切だと思う。

 

この点、当初は環境基準を大幅に上回る地下水測定結果で騒いでいたテレビなどでも、地下水の環境基準の意味と測定値の市場安全性に関する判断が冷静に語られるようになってきたことは、良い傾向ではないだろうか。