福島の外部被ばく線量について2017年01月25日 14:12

(61)福島の外部被ばく線量について

 

英国の放射線防護学会の学術誌Journal of Radiation Protectionの2017年第1号(http://iopscience.iop.org/issue/0952-4746/37/1)に、福島医大の宮崎真氏と東大の早野龍五氏の論文が掲載され、線量計(ガラスバッジ)を使った福島県伊達市の一般公衆の広範な線量測定結果と評価が報告された。

この論文の内容概略については、福島県の地方紙福島民友が1月9日に「外部被ばく線量・・政府推計は「4倍過大」避難・除染の根拠」と題して報道したが、全国規模の新聞やテレビのマスメディアではほとんど報道されていない。

論文内容は広範な測定結果を丁寧に分析した学術的にも意義のあるもので、福島県の除染結果や放射線被ばくに不安を感じている人々には、良いニュースで積極的に報道してもよいと思うのだが、残念ながら、このブログで指摘してきた放射線恐怖症を煽ってきた一部マスメディアには不都合な真実のようで、無視されている。


科学的に意味のない偏った見解に基づく甲状腺がんに関する津田氏達の論文については、前回UNSCEARの白書でも考慮する必要がないと表明されていると紹介したが、丁寧な評価分析の結果が示されている宮崎氏達の今回の報告論文は好対照であり、周辺環境の放射線レベルと放射線被ばくによるリスクを考える上での基本量である実際の個人の被ばく線量をどう評価するかに関して、正しい理解を得る上で役に立つと考える。


そこで、今回はこの論文内容を理解して、正しい理解を深めることにしたい。


<正しい理解のために>


福島県の伊達市では、福島第一原発事故後、広範囲な市民たちの個人被ばく線量のモニタリング計画を進め、2011年8月に妊婦や子供たちから始めた線量計(ガラスバッチ)による個人被ばく線量の測定を、2012年の6月からの1年間には、すべての市民に拡げるなど広範囲な個人被ばく線量のモニタリングを実施した。


一方、政府文科省は事故後空中からヘリコプターを使用して定期的に放射線測定を実施し、地表1mにおける環境空間線量率に換算し、その値が250mX250mメッシュの平均値として位置とともに公表されている(http://radioactivity.nsr.go.jp/ja/list/362/list-1.html)。



政府はこのブログでも何回か紹介しているように(例えば「56.丸川環境相発言に関して」参照)、屋内の遮蔽効果を0.4として1日24時間のうち8時間屋外、16時間屋内で生活するパターンを使い、(8+16x0.4)/24=0.6を空間線量率から原発事故由来の個人被ばく線量を評価するにあたっての換算係数として用いている。

この0.6という値を用いて除染後の外部被ばく線量を評価することから、除染が十分かどうかを評価する目安としてこの換算係数を使うことの妥当性については、問題も指摘されて来たところであった。


宮崎氏達の研究は、この問題に関して、伊達市の市民たちの外部被ばく線量モニタリングデータを丁寧に分析評価して、周辺環境の空間線量率と実際の個人外部被ばく線量の関係がどうなっているのか(上記0.6という換算係数の妥当性)を調べたものである。


比較評価された伊達市の個人被ばく線量データは、2011年9月-11月の8,989人分、2012年4月-6月の9,304人分、2012年10月-12月の59,056人分、2013年6月-9月の24,278人分、2013年10月-12月の24,162人分、2014年10月-12月の21,080人分であり、文科省による環境の空間線量率評価の第4回から第9回のデータと比較されている。


結果は、この換算係数として0.15±0.03という値が得られ、0.6という国が用いている値の1/4であったということである。つまり、これまで個人の外部被ばく線量年間1mSvに相当する空間線量率として0.23μSV/hとされてきたが、その4倍の空間線量率つまり1μSv/h程度で、年間外部被ばく線量が1mSVになるのではないかということを示しており、これまでの政府評価は、十分に安全サイドの過大評価であるということである。

除染後であっても被ばくが心配である、避難指示が解除されても被ばくが心配で元の住居には戻ることをためらう福島の住民にとっては、このような実際の結果が示されることは、重要な判断材料の一つとして大切なものではないだろうか。


もちろん、伊達市で行われたような大規模な一般公衆の長期にわたる個人被ばく線量モニタリングは行われたことがなく、線量計による個人被ばく線量データそのものが信用できるデータかどうか(職業人の被ばく線量測定のように、適切に線量計が装着され、また線量計そのものが適切に取り扱われたか)について、きちんと評価しないとこのような比較は意味をなさないものと考える。つまり、一般の人にとって線量計を常に装着した生活は負担になると考えられるから、実際の被ばく線量を適切に示していないのではないかという疑問が出てくるのは当然であろう。


これについて、宮崎氏達は次にように答えている。

「私達は、個人モニタリング計画の参加者たちの線量計の実際の使用パターンの相違は、以下に議論される他の研究が示すように、今回の結果に大きな影響は持たさないだろうと考えている。つまり、野村達は、南相馬市の学校生徒たちに実施されてきたガラスバッジ測定結果を分析し、適切にバッチを装着していたされるグループとそうでないと語ったグループの間の個人被ばく線量に統計的に優位な相違は見られなかったと報告している。内藤達の研究では、実験の参加者は線量計の使用について厳密な指示を与えられた。つまり、装着測定は義務とされ、時間単位で記録する線量計と共にGPS受信機を携帯することとされた。時間単位の線量測定結果は、GPS情報と空間線量率データベースを組み合わせて評価された周辺空間線量率と比較された。少数の参加者からなる十分に管理された学術的な研究結果から導かれた係数は、何万人もの住人を含む自治体主導の長期モニタリングに基づく今回の結果と極めて近いものであった。」




実際のデータに基づき、その内容を正しく理解し、正確な認識に立った上で判断することの重要性をあらためて訴えたいし、今後も正しい情報の提供に努めていきたい。

 

 

 

 

 




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