熊本地震と川内原発に関して2016年04月22日 12:06

昨日で最初の震度7の熊本大地震から1週間になる。この間、一部のマスメディアや野党の政治家、反原発主張の人々が、川内原発の運転停止を求める主張を展開している。

 

このブログでは、原発の再稼働問題に関して、裁判所の決定や一部のマスメディアの報道に関してその都度見解を示してきたが、科学技術上の政策判断に関わるこのような問題について、相変わらず客観的な事実に基づかない感情的、あるいはタメにする意見や主張が横行し、冷静な議論を妨げる結果になっていることを残念に想う次第である。

 

今回はそのような主張の典型である東京新聞の社説(4月16日と20日の2回にわたって主張)に関して、誤りを指摘する(私の見解は前回同様朱記部)ことによって、状況を多くの人に理解していただきたいと考える。

 

4月16日東京新聞社説より:
「日本はやはり地震国。九州を襲った「震度7」に再び思い知らされた。福島第一原発事故のそもそもの原因は、地震である。その原点に立ち戻り、原発の安全対策の在り方を再点検するべきだ。」
「国会の福島第一原発事故調査委員会は、原因は津波だけでなく「地震による損傷の可能性も否定できない」と指摘。「小手先の対策を集積しても、根本的な問題は解決しない」と結論づけた。」
→福島第一原発事故の直接原因は地震ではなく、対策を実施していなかった想定を超えた津波による電源系統の機能喪失であることは、科学技術上決着済みの事項であり、国会事故調の「地震による損傷の可能性も否定できない」との指摘は否定されている。ところが、東京新聞は、地震によって福島の事故が引き起こされた可能性を繰り返し指摘している。

これは事実に基づく報道というジャーナリズムの立場から逸脱したもので、極めて残念なことで、このような主張をすること自体が、その見解が信頼されないことをこの社説氏はわかっていないようである。

 

「原発は無数の機器と複雑な配管の固まりだ。見かけは正常に動いていても、強い震動がどの部位にどんなダメージをもたらすか。その積み重ねがどんな結果につながるか、未解明のままなのだ。断層のずれは、想定外の地震を起こす。熊本地震の教訓だ。」
→強い振動の積み重ねがどんな結果になるか未解明のままだというのなら、耐震設計など存在しないことなる。原発には多数の機器や配管があるが、安全上の重要度分類にしたがって、耐震設計の重要度が決められており、実験に基づいた科学技術知見にもとづいて、十分な裕度をもたせてそれぞれ耐震設計が行われている。新規制基準では設計上の基準地震動に見直しが行われたが、今回の熊本地震の断層のずれは、存在の分かっている活断層のずれであり、川内原発の基準地震動を策定する上でこの活断層のずれは考慮されており、想定外の地震というのは全く事実に反する主張である。

 

4月20日東京新聞社説より:
「規制委は、川内原発の再稼働を認めた審査の中で、今回の地震を起こした布田川・日奈久断層帯による地震の規模はマグニチュード8・1に及ぶと想定したが、原発までの距離が約九十キロと遠いため、影響は限定的だと判断した。熊本地震は、その規模も発生のメカニズムも、過去に類例のない、極めて特異な地震である。複数の活断層が関係し、断層帯を離れた地域にも、地震が飛び火しているという。通説とは異なり、布田川断層帯は、巨大噴火の痕跡である阿蘇のカルデラ内まで延びていた。海底に潜む未知の活断層の影響なども指摘され、広域にわたる全体像の再検討が、必要とされている。正体不明なのである。未知の大地震が起きたということは、原発再稼働の前提も崩されたということだ。新たな規制基準は、3・11の反省の上に立つ。「想定外」に備えろ、という大前提があるはずだ。未知の地震が発生し、その影響がさらに広域に及ぶ恐れがあるとするならば、少なくともその実態が明らかになり、その上で「問題なし」とされない限り、とても「安全」とは言い難い。過去の想定内で判断するということは、3・11の教訓の否定であり、安全神話の時代に立ち戻るということだ。」
→熊本地震は、その規模も発生のメカニズムも、過去に類例のない、極めて特異な地震で、正体不明で、未知の大地震としているが、布田川・日奈久断層帯の地震であることは明確で、未知でもなく想定されている地震である。マグニチュード7クラスの地震があり、6や5の地震が起きているが、活断層帯での地震であって、その規模も想定内のことであり、東日本大震災のような当時の想定外とは状況が違っている。未知の大地震が起きたので、原発再稼働の前提が崩れたというのは全く事実に反している。

 

原発の耐震設計は、まず活断層上に安全上の重要施設があってはならないということ、その上で耐震設計は基準地震動をサイトごとに科学的、合理的な判断で設定し、その基準地震動に対して健全性を維持する(実際の設計上は十分な裕度をもって対応されている)ことを担保するものである。また、今回の熊本地震での多くの家屋の損壊に関しては、地盤自体が火山灰の堆積構造で軟弱であったと指摘されているが、原発の場合にはその重要施設は強固な岩盤上に設置することとされており(私自身は建設中の原発の初期段階に何回か岩盤そのものを見ており、ひとつの記念として東北電力の女川3号機の原子炉建屋の岩盤の石を持っている)、そうした問題も生じないのだが、そうした状況の違いは考慮せず、大地震が起きたから原発は危険であるという単純な感情論でしかない。

 

想定外に備えるために、新規制基準では地震等の外部事象で重大事故が起きることを前提にその対策を求めているのだが、そのような新規制基準対応を正確に理解しないで主張することは不毛な議論で残念なことであるし、2回にわたって不正確な事実認識に基づいて主張するこの社説氏に抗議したい。




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