原発再稼働問題:川内1、2号機 福岡高裁宮崎支部の運転差し止め棄却決定に関して2016年04月07日 13:40

これまで、このブログでは、科学技術上の問題については、正しい事実認識に立ったうえでの判断、決定でなければその主張に論拠はなく、かえって信頼を失うことになると、繰り返し主張し、前回、大津地裁の高浜原発3、4号機運転差し止め決定に関しても述べてきた。

 

昨日の福岡高裁宮崎支部の決定は、その意味では妥当なものだと考えるが、今日の新聞各紙の社説を見ると、脱原発を主張する各紙は相変わらず、正しい事実認識に立って主張しているのでなく、かってに解釈したり、思い込んだ見解を基に再稼働反対主張をしていて、主張の底の浅さを露呈した格好になっており、再稼働反対派にとっても残念な結果になっているのではないだろうか。

 

私は、正しい事実認識に立ってからの主張であれば、自分はこのリスクは容認できないという立場で再稼働反対でもよいと思うし、多様な意見から民主制の手法にしたがって施策を決定していけばよいと考えている。

 

科学技術的な事実認識を共有できれば、そこに話し合いの余地が生まれ、より良い政策判断ができると考えているからである。それが、最初から誤った事実認識であれば、共通の基盤がなく、福島第一原発事故前のような二項対立論に逆戻りし、安全性向上の機運を損なうものになることを恐れるからである。

 

今回は、脱原発主張の代表紙である朝日新聞の社説における事実認識の誤りを指摘(私の見解は朱記で示す)し、マスメディアやジャーナリズムに反省を求めるとともに、皆さんにポイントを理解していただきたいと思う。

 

4月7日朝日新聞社説より:

「今回の福岡高裁宮崎支部は「一度に避難する事態に対応できない」「バスが足りない」など住民側が主張する問題点を指摘できるとしても、「避難計画がないわけではない」と、住民の人格権の侵害には当たらないとした。福島の事故では、多くの住民がスムーズに避難できずに混乱に陥った。その現実を十分に考慮した結論とは思えない。」

 

→大震災による福島第一原発事故の際、多くの住民がスムーズに避難できず混乱に陥ったというのはその通りだと思うが、だからこそ、防災基本計画や原子力対策指針が見直され、それに従った避難計画は川内原発でも策定されている。また、福島と川内では炉型も違う(BWRとPWRでは格納容器の大きさも違うし、想定事故の進展状況も違う)し、過酷事故時の放出放射能量も新基準ベースでは福島の100分の1以下になるという評価に基づいた現実的な避難計画(一度に多くの住民が一斉に避難するのでなく、屋内退避を含めたそれぞれのサイトに適した避難計画)が大切で、また、完全な避難計画など存在せず、訓練等と通じて不断に見直し、より良いものにすることが重要なのだが、この新聞の主張は、正しい事実認識に基づかないで、それこそ、「現実を十分に考慮した結論とは思えない」。

 

「高裁はガイドが噴火の時期や規模を的確に予測可能としていることを「不合理だ」と認定した。それなのに、原発を襲う破局的噴火のリスクの頻度は低いなどとして、「可能性の根拠を示さない限り無視できる」とした。不備を認めながら、リスクは「発生の頻度が低いから無視し得るのが社会通念だ」と結論づける。それは、想定外が起きた福島の事故をふまえた態度といえるのか。」

 

→「想定外が起きた福島の事故をふまえた態度といえるのか」と感情論で指摘するが、福島の事故原因だった津波と巨大噴火という自然災害の発生頻度を同一に見るという事実認識の誤りであり、これでは、隕石落下すら想定しなければならず、ゼロリスク論から向け出せていないのである。

東日本大震災時のような津波は、千年に一度程度の発生頻度が想定されるが、上記の主張で問題にしている巨大噴火は1万年に一度程度の発生頻度と考えられ、南九州全体が壊滅するような噴火であり、これを今現在考慮しないといけないのなら、そもそも南九州に人が住んではいけないことになる。だが、現実に多くの人が生活しているのは、まさに「発生の頻度が低いから無視し得るのが社会通念」になっているからではないか。

 

「福島の事故の原因は定かでなく、いまなお約10万人が避難生活を送る。だからこそ各種世論調査で再稼働に慎重な声が過半数を占めるのではないか。」

 

→福島第一事故の直接原因が、対策を想定していなかった大津波であることは定かであり、科学技術上は決着した問題であるが、相変わらず定かでないと主張する。再稼働に慎重な声が過半数を占めてもよいと考えるが、この社説氏のように、正しい事実認識に基づかないで、感情論で判断しているのであれば、それは残念なことだと私は思う。


コメント

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