福島第一1号機の非常用電源喪失時間データ(津波が直接原因)2013年05月15日 11:08

東京電力は先週(5月10日)、2011年3月11日の震災時の福島第一1号機の過渡現象記録装置の追加データを発表した(http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/handouts/2013/images/handouts_130510_09-j.pdf)。

このブログでは、福島第一の事故の直接原因が、津波であることは客観的、科学技術的な観点から見て決着済みことであり、事故調査報告書の中で、唯一この点に疑問を投げかけている国会事故調の論理に対して、採用できないことを指摘した(2012年7月13日の記事参照)。

今回の追加データの発表で、津波襲来まで非常用発電機は健全に運転継続していたことが明確になり、非常用発電機は、「津波襲来前に地震により故障停止していた可能性がある」という国会事故調の指摘を採用することが出来ないことが、より明確になったといえる。

そこで、今回は昨年の7月の私の見解に追加して、東電のデータと国会事故調の指摘との関係を説明してみたい。

尚、今回データが発表された過渡現象記録装置というのは、発電所に何か異常な事態(例えばスクラム(原子炉の停止)やタービンや発電機トリップ(タービンや発電機の故障停止)等)が生じた際に、その原因を調査するため、事象発生前後のプラントの主要なデータ(水位、圧力、温度、流量、電圧等のアナログデータやバルブの開閉、ポンプの起動停止といったデジタルデータ)を高速(1ミリ秒程度)サンプリングで30分程度収集記録する計算機システムで、飛行機事故の原因究明に役立つフライトレコーダと同じような役割を持っているものである。

発電所にはもともとプロセス計算機が導入されており、通常の運転監視はそれらのデータを使って実施されるが、データの収集時間は1秒程度で遅く、トラブル時の原因究明には十分でないことから、フライトレコーダのような役目を持つ装置の必要性が認識され、開発・導入されてきたもので、私はメーカの原子力エンジニアとして、こうした装置の開発・導入を推進してきた一人である。

今回追加発表されたデータは、本来機能の事象発生(地震による原子炉停止)前後の高速サンプリングデータではなく、1分周期で装置に1週間分程度採取され残っていたデータを調べてみたということである。

 

<1号機非常用電源A系の喪失データ>

 今回東京電力が発表したデータでは、1号機の非常用電源の停止はA系とB系ほぼ同時刻で、15時36分から37分の間ということが明確になっている。

 国会事故調は、委員の構成から見て、もともと調査報告が科学技術的観点からの評価には値しない内容になると考え、その懸念を指摘してきたが、国会事故調の報告書では、
1号機の非常用電源A系の故障停止時間は記録が全くなく、当時の運転員へのヒアリングから、13時37分と運転日誌に記載されているB系より1~2分早かったと結論付け、号機の非常用電源A系の停止は15時35~36分としている。

 データがないことから、1年以上経った時点での運転員とのやり取りから、無理にA系はB系の1~2分前に停止したという報告にもっていっているように見えるということを指摘したのだが、そのことが今回の追加データで明確になったといえるだろう。

 また、母線電圧の低下(津波により負荷の水没)時点で発電機電圧が維持され、非常用発電機は機能していたことが明確に示されたデータとなっている。

 もともと、地震発生による外部電源喪失時の非常用発電機起動電圧確立(14時48~49分)から津波襲来までの約50分間は、健全に運転されていることは他のデータからも明確で、客観的、科学技術的評価からは、地震により非常用電源が故障停止した可能性を採用することはできないのだが、今回の非常用発電機の実際の電圧データから、あらためてこのことがはっきりしたということであろう。

 以上、今回東京電力が発表した追加データは、これまでも全交流電源喪失の直接原因は津波であるということは、明らかであったことであるが、さらにそのことを明確に示すデータとして参照されるべきものである。




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